俺も あの男と同じだろうか 止める資格なんてない

「じゃあ、行ってくるね 叔父さん」

「・・・・・・・」

「?・・・叔父さん?」

「あ、いや 何でもない。 気をつけてな」

姪の不安気な声に、あわてて言葉を取り繕った。

亜莉子は ぼうっとしているように見えて、

意外と人の気持ちの変化に敏感な子なのだということは

一緒に暮らし始めてから分かったことだった。

この子を不安がらせてはいけない、という気持ち半分、

そして後ろめたい気持ち半分で

 

「あんまり、遅くなるなよ」

の一言をどうにか捻り出す。

笑顔で応じて出て行った姪を見送ってから 

「…はあ」 と 小さく溜息を吐く。

・・・自分の気持ちに嘘をつくのは 疲れる。もともと、得意ではないし。

本当は、亜莉子があの男と連絡を取り合うことも、まして会うことなんて

許したくもないくせに。

 

『君だって、人の事は言えないんじゃないのかい?』

 

全てを見透かしたような、いつかのあの男の言葉が蘇った。

そんな筈ない、そんなはずない。でも

 

 

こんな家族として間違った気持ちなど

自分でも許せないと確かに思うのに

 

 

「…図星、だよ」

 

ほら、やっぱり俺にはあの子を止める資格なんてない。

 

 

 

 



あとがき(反転)

叔父さんは亜莉子を姪以上に大切に思ってるけどヨコシマな気持ちは断じてないという叔父アリが理想です。

ヨコシマな気持ち持ってるのなんて武村さんだけで十分です。

あの人は真性変態というのが砂原の理想です(笑)