12月24日にケーキを買うようになったのは亜莉子と暮らしはじめてからだった。
近所の小さなお菓子屋で受けとったのはいちごと生クリームのまるいケーキ。
オレンジ色の紙袋の中、箱におさまるそれは随分とこぢんまりとしている。
大きなものを買ってもとても食べきれないからだ。
うちは家族少ないし。そう、三人きりだし。
「おかえりなさい、叔父さん」
玄関先に出てきた亜莉子はその紙袋を見るといつも嬉しそうに笑う。
おふくろが晩ごはんをつくっている間にケーキを切り分ける。亜莉子は楽しそうにそれを見ている。
まず半分に。そしてさらにまた半分に。
メリークリスマスと描かれたチョコレートのうすい板は亜莉子のものと決まっている。
切り分けたケーキを白い小皿にうつして「準備完了だな」と言ったらくすりと笑われた。
「何だよ」
「ううん、気づいてないのかなー、と思って」
「何が?」
首を傾げると、亜莉子は人さし指でケーキを指した。
「いち」
「に」
「さん」
「あ」
言わんとすることがようやくわかった。
「よん」
食卓の上には四枚のお皿に四切れのケーキ。うちは三人家族なのに、だ。
これは誰の分?とでも言いたげに亜莉子はこちらを見てにこりと笑う。
「去年は三つに切ったよね、確か」
「・・・四つの方が切りやすいんだよ」
「うん、チェシャ猫甘い物も好きだからね。きっと喜ぶよ」
「・・・あげるならおふくろにばれない様にしろよ」
「りょうかい」
これ以上ないってくらい楽しそうな亜莉子の顔。ケーキの紙袋を見たときよりも、きっとプレゼントを受け取る時よりも。
「にゃー」
追い打ちをかけるようにタイミングよく灰色の猫は帰ってきて、存在をアピールするように低く鳴くから何だか無性に恥ずかしい気分になる。
無意識だっただけに、余計に。
そんな心中など何にも知らない亜莉子は「よかったねー、チェシャ猫」と言って猫を抱き上げた。
あとがき
クリスマス意識して・・・みた? 何か叔父アリなんだか叔父猫なんだか分からない。
しかも猫の出番がほぼ皆無(汗)
うっかり無意識に猫の分のケーキまで用意してしまって照れるかわいい叔父さんを目指したのですが(何それ)
叔父さんは亜莉子へのプレゼントも用意してます。ご飯の時に渡すのです(どうでもいい設定)
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